調相用設備塗装
師走の中、塗装業界は冬眠前の最後の繁忙期を迎えております。
今回は某変電所にある調相用設備の塗装工事をご紹介。
調相用設備とは電流を調整して送電系統の電圧を安定させる装置です。
このフェンスの中にある機器を塗装するには当然電気を止めて塗るしかありません。
ここは道南でも「基幹系」とよばれる重要な位置づけの変電所で簡単に「塗りたいから電気を止めて」と言う分けにはいきません。
1年以上前から綿密な停電の計画を立て、今回は1機器当たり3日間の停電での作業となりました。
この低温の中非常にタイトでありますが与えられた条件で最善を尽くすしかありません。
停電開始と共に作業開始。
白いお皿が重なっているものは碍子(ガイシ)という絶縁の設備で衝撃に弱いため間違って何かをぶつけてしまうと大変な事になります。
真っ先に行うのがこの碍子を保護し養生する事です。
碍子を保護した後足場を組立てます。
フェスン内が狭い中で作業できる人数が限られてくる為、塗装班自ら足場を掛けます。
普段はフェンス内で入る事が出来ないため、電気を止め足場を掛けて初めて初めて全容がわかります。
上部はやはり経年劣化で各所に発錆が見受けられました。
タイトなスケジュールでも錆の除去はしっかりと。
もくもくとサンダー掛けを行います。
発錆していない部分ももちろんケレンを行います。
ケンマロンでごしごし。
塗料の食いつきを良くします。
ケレンが終わると高圧洗浄です。
ケレンカスなどを吹き飛ばし見えない敵=塩分も吹き飛ばします。
洗浄を終えると電気の線などを養生します。
付いてはいけない部分に塗料が付くと後で電気を通したとき重大な事故に繋がりかねません。
相互に洩れがないか確認しながら養生していきます。
雪のちらちら舞う中この低温では品質確保は難しいと判断し暖房を入れる事に。
ファーネスヒーターという温風が出るタイプのもので透明なダクトを通って暖気を送ります。
機器の廻りをぐるぐるとダクトを這わします。
温風を出したい場所にカッターで穴を開けそこから暖気をとります。
ちなみにこのダクトのお値段ちょっとびっくりする位高いです。
ケレンした部分に錆転換剤を塗布します。
錆を安定化させます。
わずか数分で膠着しているのがわかります。
いよいよ錆止めを拭き付ける段取りを開始。
吹き付け機エアレスを調整します。
熟練工により気温による塗料粘度の変化に圧力を微調整しながら錆止めを吹き付けていきます。
頻繁におきに「もっと圧力上げて」「シンナーもう少し足して」など声が飛び交います。
錆び止めを終え一安心!と思いきや翌日現場に行くと雪が積もっていました。
停電時間の制約も迫っており泣き言を言っている時間などありません。
全員で雪掻きを作業中の降雪に備え天井をブルーシートで覆います。
風でブルーシートが電気が通っている他の設備に飛んでいったら取り返しのつかない重大事故に繋がるので
全員で端部をしっかり持ちシートを掛けます。
最後の大仕事上塗り吹きの開始です。
実は上塗りの吹き付け中小雪が舞っていたのですがブルーシートのお陰で助かりました。
やはり作業では手間を惜しんではダメですね。
時計とにらめっこしながら養生を撤去します。
この寒空の下みんな素手です。
その方が綺麗に素早くテープを剥がせるからですがスタッフの熱意に感謝です。
養生を撤去している間、乾きの遅そうな場所に温風をピンポイントで当てます。
通電し機器が稼働してしまえばまた数年誰も見る事のない場所ですがプロ根性です。
最後は碍子を清掃して終わりです。
ハードで濃厚な3日間でした。
ラジエーター部分もばっちり。
錆だらけだった上部も生まれ変わりました。
調相用機器とセットになっている遮断器も綺麗になりました。
フェンス毎に分離されている計5セットの機器を2年掛けて塗装してきました。
後ろから見る機器群です。
こうしてみると良くやったなあと感慨深いものがあります。
次回塗装は何年後になるのか。
その時今回の工事はどう検証されるのだろうか。
スタッフの頑張りに感謝しつつ変電所を後にしたのでした。